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ジュエリー(宝飾品)に用いる、金・プラチナ・銀は財産的価値が高く、同時に化学的に安定している貴重な金属です。その特性を更に生かした加工をしやすくするために割り金という他の金属を加えます。 例えば金はK18、プラチナはPt900、銀はスターリング(Ag925)などのように合金を作り、硬さを調整することにより、様々な美しい形状を可能にします。また金は美しい色調(カラーゴールド)を作り出します。 ジュエリーの加工に用いるもので、ちょっと気になるアレルギーや中毒をおこす金属を紹介します。 皆様にジュエリーを楽しく身につけていただくために、金属をご理解いただき、参考にしていただければ幸いです。
人のさまざまなアレルギーの中で、ものが肌に触れたことによる皮膚の炎症を接触皮膚炎といいます。 例えば、トイレ掃除用の激しい薬品や硫酸などの化学薬品が直接肌に触れると、急激に皮膚に炎症を起こします。これを刺激性接触皮膚炎といいます。 また化粧品、洗剤、塗料、皮革、金属イオンなどに徐々に反応して炎症を起こすことを、アレルギー性接触皮膚炎といいます。 アレルギー性接触皮膚炎の原因が金属の場合を金属アレルギーと呼びます。 激しい薬品に触れた場合の刺激性接触皮膚炎は、ほとんどの人が急激な炎症を起こしますが、アレルギー性接触皮膚炎は、アレルギー反応を起こす人にのみ発症しますので、二つには大きな違いがあります。
奈良の大仏は建立当時、まばゆいばかりに金で覆われていました。これは、金を水銀で溶かし(ほぼ1:5の割合い)、鋳造された像に塗りつけて火にあぶって水銀を蒸発させて金を残した、水銀アマルガム法という金めっきです。 この技法は今でも伝統的技法としてジュエリーや金銀器に用いられています。作業のときは、蒸発した水銀を処理する装置が必要です。
鉛と同様に、古い時代から水銀は金銀の精錬に用い、また温度計、病院で使われる血圧計にも用いる重要な、そして、唯一常温で液体という不思議な金属です。
九州から四国、紀伊半島にかけて水銀の鉱脈(硫化水銀:辰砂)があり、古くからそれらを採掘精錬する特殊な職業集団や地域を丹生といい、丹生神社とともに各地に存在しますから、心当たりのある人もいると思います。
水銀は多くの他の金属と溶けてアマルガムを作ります。特に金製品と接触すると、金に吸い込まれるように染みていき、金は白濁しボロボロになります。
金の指輪やブローチが変色してしまったとお店に相談に持ち込まれるものが結構あります。これは、水銀を利用した寒暖計、体温計を割ってこぼれた水銀が原因のようです。
お取扱いには充分ご注意下さい。
水銀は人間の皮膚に浸透する力が非常に強く、また強力な殺菌力がありますので、日本でも水虫の治療薬として水銀入りの軟膏が売られていたこともありました。消毒薬マーキュロクロム(赤チン)にも水銀が含まれていました。
これらは現在、日本では禁止されています。しかし、海外では依然として販売されている国もあるようです。水銀が含まれている薬がジュエリーに付着すると「水銀の腐蝕」が起こりますのでご注意下さい。
ジュエリー製造の一方法であるロストワックスキャスティング法で金地金を溶解するとき、溶解温度をさげ、また溶湯の流れをよくするために地金素材にカドミウムを微量に添加することがあります。そのおり、カドミウムは沸点(767℃)が低いので、溶湯を鋳込むと同時にほとんどは気化すると考えられています。従って、製品として出来上がったときには、カドミウムはほとんど含まれていません。 製造現場では、カドミウムの蒸気が健康に良くないということがわかり、最近ではカドミウムを添加した素材は用いていません。
また、銀ろうには、JIS規格の中にカドミウム入りがありますが、同様に現場ではほとんど用いていないのが現状です。
ジュエリーに用いる貴金属(金・プラチナ・銀)には、鉛は含んでいません。
これは、貴金属に鉛が混入すると、素材が割れるなど脆くなり、加工が困難となるためで、貴金属に鉛を混入してはならないことは現場の鉄則となっています。同時に、製造現場では、簡易金型や打刻作業の金床として鉛を使うことがありますが、その破片が地金に混入しないように細心の注意を払っています。
多くの金属は、その特性に応じて利用されています。鉛もその一つです。もし鉛がなければ、ジュエリー用金地金を安心して使用できないかもしれないのです。
それは金銀を精錬する方法の一つの乾式精錬法に鉛を使用するからです。またこれは、造幣局が検定依頼を受けた金製品の品位の検査に用いる灰吹法という分析方法に応用され、鉛が重要な役目を果たしています。造幣局の金の検定マークを見たときは、鉛のお世話になっているということを思い出して下さい。
皆様の車のバッテリー、病院のレントゲン検査室のⅩ線遮蔽壁も鉛です。こうやってみると、鉛は生活のために大変重要な金属であることがわかります。
ニッケルアレルギーの症状は皮膚に痒みや紅斑が現れ、更に進むと小水疱や悪化すると化膿します。
金属アレルギー性接触皮膚炎を起こす可能性のある身の回りの金属には20種ほどが知られていますが、ニッケル、コバルト、クロム、水銀がパッチテスト反応が高いとの報告(*1)があります。
ジュエリー、アクセサリーなどの装身具、バックル、ヘアーピンなどの服飾雑貨品の金属やめっきによってアレルギーが発症することがあります。アレルギーの原因金属は、用いている金属の種類やパッチテストからニッケルの可能性が高いと思われます。
(*1)参考 厚生労働省 病院モニター制度(平成17年度発表) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/12/h1222-4.html
症状が出た場合は、まずは、直ちにジュエリー・アクセサリー・時計などが直接肌に接触する使用を中止して下さい。そして、早急に皮膚科行き、検査してもらって下さい。
バッチテストなどで原因を教えていただけます。
金属アレルギーの場合は、該当の金属が含まれているかを店舗スタッフにご確認してください。すぐに分からないこともありますが、丁寧に教えてもらえますよ。
金属にはニッケル以外も含まれることが多くありますので、注意してくださいね。
金属アレルギーは何らかのきっかけで体内にその金属の抗体ができるためです。一度発症すると、治癒することは難しいと言われていますが、詳しくは、お医者さんにお尋ね下さいね。
アレルギーを起こす怖いニッケルも、実は大変有用な金属です。
身の回りでは、食器や台所用品のステンレス、メガネやワイシャツ、ブラジャーの形状記憶合金、50円・100円・500円硬貨の白銅などにもニッケルが用いられています。これらはニッケルの特性(硬さ、ばね性、色調など)を引き出したもので、私たちの生活になくてはならないものです。
ジュエリーの場合、(社)日本ジュエリー協会では、ピアスの部品(針、キャッチ及び耳朶に直接接する部分)にはニッケル含有金属を用いないこととして、ピアス取り扱いメーカーや小売店に周知を図っています。
これは、ピアスの穴をあける時に、その傷から出る体液によって金属イオンが溶け出し、金属抗体を作る確率が高くなるためですが、完全に上皮化(傷が回復し上皮で覆われること)されたかどうか判断が難しいからです。
ただし、ジュエリーで用いるホワイトゴールドには、割り金としてニッケルを用いている素材があります。 これは、その素材に硬さ
、ばね性、色調を求めるために、ニッケルの特性を活用しているからです。 (社)日本ジュエリー協会では、ピアスの部品以外のこれらの素材についてのニッケルの使用制限は示していません。
その理由は、
1.ニッケル入りホワイトゴールド素材によるニッケルアレルギーの報告例(*2)が現在まで届いていないこと
2.ヨーロッパのニッケル使用制限に従って製造されているヨーロッパ製(イタリア・フランス)のホワイトゴールドに含有されるニッケルの量(*3)と、通常用いられる日本製の素材の含有量に大きな差がないこと(*4)
3.貴金属以外のニッケル含有金属(ステンレス鋼、形状記憶合金、洋白)などによるニッケルアレルギー報告(*2)が極めて少なく(メガネ関係で1件)、また今後も素材の使用が継続されることを確認していることに因るものです。
しかし、(社)日本ジュエリー協会では、 ニッケル含有素材を用いる場合は、金属アレルギーの注意を喚起する説明書やシールを添付するように指導しています。
(*2)(社)日本ジュエリー協会技術部会が行なった調査で、ジュエリー関係、アクセサリー関係、ステンレス鋼関係、洋白関係、めがね関係、事務機文具関係などの業界団体へのアンケート調査。
(*3)(社)日本ジュエリー協会技術部会が行なった検査で、市場から求めたヨーロッパ製のホワイトゴールド製品のニッケル含有率、ニッケル溶出率の分析検査。
(*4)EUのニッケル使用制限指令は、金属に含まれるニッケルの溶出率が一定値以上の材料の使用を制限しています。
ここで説明するニッケルの含有量(率)は、一般的に含有率が高いと溶出率も高いと思われますので参考に説明していますが、含有率と溶出率は必ずしも一定の率ではありません。